医学用語と食べ物のかかわり 循環器編

医療従事者が病変の比喩に食べ物をよく用いることは周知のことだと思うが、そのような表現についてまとめていこうと思う。こういったことは誰かがすでにやってそうなものだが見つけることはできなかった。先例があるのなら教えてほしい。

ここでは循環器に関するものについて書く。実際に使用されていることはGoogleで検索するなどすれば知られるので出典などは基本的に明示しないが、網羅的に調べるにあたっては『病気がみえる vol.2』第4版などを参考にしている。循環器とくくるには不適切に思われるものもこれに載っているものは便宜上ここに書く。いずれ整理する。

あまりにも内容が少ないので他の記事と統合するかもしれない。奔馬調律/gallop rhythmとかTAOの蛇腹様所見/accordion-like appearanceみたいな面白い表現はたびたび目にするが、食べ物かというと… 

 

 

卵形心陰影/egg-on-a-string sign

完全大血管転換症の胸部X線像において見られる所見。位置の入れ替わりによって肺動脈が大動脈の後方に存在し、また循環不全で胸腺が縮小することから心基部が小さくなっている。卵が紐で吊るされているように見えることからegg-on-a-stringというらしい。

卵円孔/foramen ovaleや卵円窩/fossa ovalisなどの「卵」も知られている。

 

water bottle sign

Ebstein病の胸部X線像で見られる、右房拡大によって右第2弓が突出した所見。

三尖弁が右室側へ偏位することで右室収縮力低下・三尖弁閉鎖不全を呈する疾患だが、後者による右房の容量負荷のために心拡大が生じる。水筒というよりは首の長い壺に見える。

食べ物関連ということにしておいたが微妙なライン。 

 

粥状動脈硬化/atherosclerosis

粥腫/atheromaの由来をonline etymology dictionaryで引くとギリシャ語で粥を意味するathere(ギリシャ語で書きたかったが表記が不明)とのこと。粥といっても我々が食べるコメの粥ではなくオートミールなどを指す。意外なことにちゃんと逐語訳になっている。

 

ニクズク肝/nutmeg liver

慢性的な鬱血により肝障害をきたした肝臓。割面がニクズクに見えることからこう呼ばれる。

 

bread and butter pericardium

いわゆる線維素性心膜炎。表面が「バターを塗ったパンを床に落とした際の模様」に見える、という理由からこう呼ばれる。

バターを塗った面を床から引きはがすとき、粘性で表面にゴワゴワした模様ができるじゃないですか。線維化によってああいう感じの表面を呈するらしいです。ググれば察せられる。

 

 

以上の内容は予告なしに編集・追記されることがある。他にあれば教えてほしい。