医学用語と食べ物のかかわり 呼吸器編

医療従事者が病変の比喩に食べ物をよく用いることは周知のことだと思うが、そのような表現についてまとめていこうと思う。こういったことは誰かがすでにやってそうなものだが見つけることはできなかった。先例があるのなら教えてほしい。

ここでは呼吸器に関するものについて書く。実際に使用されていることはGoogleで検索するなどすれば知られるので出典などは基本的に明示しないが、網羅的に調べるにあたっては『病気がみえる vol.4』第3版などを参考にしている。題にそぐわないように思われるものもこれに載っているものは便宜上ここに書く。いずれ整理する。

 

 

粟粒結核/miliary tuberculosis

結核菌が血行性に播種し、全身で結核結節を形成した状態。胸部X線像では両肺野にびまん性の粒状影が見られ、これが粟/milletを思わせる。間違えそうだがmilitaryではない。

 

豚脂(ラード)様角膜後面沈殿物/mutton fat keratic precipiate

サルコイドーシスの初発症状として見られうる眼病変の一つ。T細胞や単核貪食細胞の集積によって非乾酪性上皮細胞性肉芽腫を生じる疾患だが、虹彩毛様体炎を生じると角膜上皮細胞の集積からこのような所見を呈する。他の疾患でもしばしば生じるらしいのでいずれ追記する。

日本語では豚脂/lardと表現しているのに対し英語ではmutton fatとなっている。羊脂じゃないんだ。なじみがないから? 

 

卵殻状石灰化/egg-shell calcification

珪肺で見られる肺門リンパ節のX線所見。何で卵状じゃなくて卵殻状なんだろう。

珪肺では増生した膠原線維による珪肺結節/silicotic noduleが生じるが、これもタマネギ状と形容される。こちらは分かりやすい。

 

乳糜胸/chylothorax

外傷・外科治療に際して生じる損傷、あるいは腫瘍による圧迫などから胸管由来のリンパ液が胸腔内に溜まった状態。消化器のくだりでも述べたが乳糜は乳粥を意味する。

 

カフェオレ斑

von Recklinghausen病で生じる皮膚所見として知られる。Horner症候群との関わりなどから便宜上ここに書いておくが、いずれ追記しつつ移動する。

 

メロン皮様網目陰影/crazy-paving appearance

自己免疫性肺胞蛋白症などで見られるCT所見。サーファクタント貯留によるすりガラス様陰影がしばしばこのような様態を呈する。

ちなみにこの疾患では気管支肺胞洗浄液の白濁が見られ、ミルク状・米のとぎ汁状と形容される。

 

ビール樽状胸郭/barrel chest

COPDで見られる胸部所見。肺の過膨張により胸郭が変形する。

 

currant jerry sputum

Klebsiella pneumoniaeの感染により生じる血痰。このcurrantことスグリは日本ではあまり流通しないが、欧米ではジャムなどにして食べられている。

 

燕麦細胞癌/oat cell carcinoma

かつて小細胞癌の一種としてこのようなカテゴリが存在した。現在のWHOの分類には存在せず、単に小細胞癌として扱われている。

 

cottage loaf sign

横隔膜ヘルニアにおいて肝の一部が胸郭に嵌入することで生じる所見。CTなどで知られる。

このcottage loafというのはパンの一種だが、大小2つの塊をダルマ状に接合して焼くためやや特殊な形を呈する。この所見でも肝の嵌入した部分がダルマの頭のように見えることになる。

 

Adam's apple

喉頭隆起/laryngeal prominenceの別称。

 

pink puffer

COPDの病型の一つに対する形容。肺気腫からの労作時呼吸困難に際し、赤ら顔で口すぼめ呼吸をする様子がピンクのフグに見えることから。

 

blue bloater

COPDの病型の一つに対する形容。慢性気管支炎の患者で肥満体型が多く見られること・しばしば低酸素血症を呈しチアノーゼに至ることを「青いサバ」と評している。

 

 

 

以上の内容は予告なしに編集・追記されることがある。他にあれば教えてほしい。